いよいよ地獄谷です。今までは左手に湖があったのですが、これより先は湖を背後に谷を登ります。
岩が赤みを帯びています。鉄分の影響です。
温泉というより鉱泉ですかね。

極わずかですが、かすかに硫黄の香りがします。

しかし、見渡せど噴気孔もなく、地獄谷と知らなければ
ただの山奥の谷底です。

火山性の地形が好きな自分にとり、地獄(谷)とは
たいていの場合、ガスの噴出や熱水の湧出を形容したもの。

今は、活動こそ見られなくなりましたが
その昔は、この谷も、そのような音や臭いが漂っていたのでしょうか。
もし、そうであるならば、多少なりとも名残はあるはず。

いつしか、道はなくなり、沢を登る自分。
一人の探検は細心の注意。
ヘルメットを被り、緊急用の酸素缶も携帯。

引湯用の導管らしきものを発見。 まさか、こんな赤みのかかった
谷から飲水は引かないはず。 期待できます!
これより先に登るのは危険と判断。沢の幅が狭くなり、
水の流れが一箇所に集まっています。

実は、沢の岩場の奥に白く見えるものは7月の残雪です。

こんなに奥に来たのに、硫黄ガスの濃度は、
相変わらず微量なレベル。
やはり、鉄分なのか硫酸鉄泉の成分なのか、
岩にコケ類が一切付着していません。
滑(ナメ)がないので足元は確かです。

最奥まで来たのに、温泉を発見できず残念至極と周りを見たら、
ややややっ。先ほどの導管と、野湯らしき遺構を発見!!

その昔は、ここから湯を引いていたのが分かります。
しかし、梅雨時の増水も手伝い、野湯は野水でした。
全く、硫黄の味も臭いもしません。

しかし、この近くに名残となる何かの流れを発見できるはずと
足元を注視する。まさに、この野湯跡に流れ込む細い流れが・・・・・
沢本体の赤い流れとは趣きを異にする白い付着物。
これぞ、捜し求めていた硫黄の流れと、付着物を手に取り
鼻に近づけてみると、これまた残念。
硫黄の香りなど全くなく、石灰というか石膏の香り。
しかし、谷全体として、わずかに硫黄臭はするのですが。不思議です。



年に一度は訪れる大白川、白水湖。
今回の最大の目的は地獄谷に温泉を捜し求めるものでしたが、
満足いく回答は得られませんでした。

ただ、前々から不思議に思っていた地獄谷の地名をこの目で確認できた
積極性だけは、最近の怠惰な自分に取り、
良いカンフル剤にはなりましたが。

谷底の一番奥に白水湖が望めます。

普段なら、早朝に家を出発し、日帰りの大白川ですが、
今日は大白川野営場でテントを張ります。
余裕を感じる時間配分って大好きです。

岐阜県白川村。世界遺産の白川郷を擁します。
飛騨地方は高山市と飛騨市に大合併されましたが、ここ白川だけは
独立独歩を選択できました。

いつしか分水嶺を越え、水の流れは日本海。
このまま真っ直ぐ10キロほど進めば白川郷なのに
いつも自分は大白川公園線に左折します。

だから、まだ一度も世界遺産を目にしていません。


晴れていればスイスやカナダのような光景なのに
怪しげな雲が勢い良く流れます。

東海地方であっても、緯度で言えば北陸地方。
石川や富山と隣接しています。ましてや福井より高緯度です。

梅雨前線。真一文字に停滞すると知っていたなら、
北陸地方の天気予報に注視するべきでした。

このあと、恐るべき豪雨に遭遇し、あわや肺炎の危機に。